公開日: 2025.08.18

遺留分に関するQ&A

遺言・相続

Q1.遺留分って何?

例えば、Aが死亡し相続が開始したとします。相続人は妻Bと子Cの2人です。Aは1,000万円の預金と5,000万円相当の絵画を所有していました。生前Aは密かに遺言書を作成しており「絵画はDに譲る」と記載されていました(このように遺言書によって財産を与えることを「遺贈」といいます)。
仮に、Aが遺言書を作成していなければ、BとCはそれぞれ3,000万円相当の財産を相続できたはずですが、上記の例では、それぞれ500万円しか相続できません。
BとCは、Dへの遺贈のせいでAから相続できたはずの財産の額が大幅に減ってしまったことを不満に思うかもしれません。

このときに、期待を害された相続人は「遺留分」という権利に基づいて、受遺者(遺贈によって財産を譲り受けた者)に対し、穴埋めとして金銭を支払うよう請求できることがあります。
上記の例でいえば、BとCは、Dに対し、それぞれ1,000万円を請求することができます。
このように、遺留分とは、被相続人から少なくともこれだけはもらえるという最低限度を保障する制度・権利です。この最低限度の保障が法律で与えられている人のことを「遺留分権利者」といいます。

Q2.遺留分権利者は誰でもなれる?

遺留分権利者となるのは、被相続人の「兄弟姉妹以外の相続人」です。配偶者、子(代襲者・再代襲者)、直系尊属が相続人となる場合に遺留分が認められています。
相続欠格者や廃除された者のほか、相続放棄をしたために相続人にならなかった場合には遺留分権利者となりません。

Q3.遺留分の算定方法は?

遺留分を算定するための財産に2分の1(直系尊属のみが遺留分権利者である場合に限り3分の1)を掛け、遺留分権利者が複数人いる場合にはさらに法定相続分を掛けて算出します。
上記の例でいえば下記のとおりです。

6,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,500万円(BC共通)

この「1,500万円」がBCそれぞれの遺留分(最低限度保障される額)となります。
BとCは、Dへの遺贈により、それぞれ500万円しか相続できない状況となっています。
そのため、最低限度保障される額を侵害している形となったDに対し、それぞれ1,000万円を請求できるということになります。

もっとも、遺留分の算定には生前贈与の算入など複雑な問題が絡むことがありますので、実際の算定の際は専門家に意見を聞かれることをお勧めします。

Q4.遺留分の放棄ってできるの?

遺留分権利者は、遺留分を放棄することができます。相続開始後に遺留分を放棄する場合は、単にその旨の意思表示をすることで足ります。

しかしながら、例えば上記の例で、Aが病気療養中であったにもかかわらずBとCは無関心でほとんど何もせず、他方Dは献身的にAの身の回りの世話をしてくれていたため、Aは遺贈を決意した、という事実があったとします。
Aの生前において、BとCは、Dへの遺贈に納得していましたが、Aが亡くなった後に気が変わるかもしれません。Aとしては、BとCが遺留分を主張しないようにしておきたいところです。

そのような場合に、遺留分の事前放棄(相続の開始前における遺留分の放棄)をすることができます(実際にはAがBとCに遺留分の事前放棄を促すことになると考えられます)。
ただし、遺留分を事前放棄するためには、家庭裁判所の許可を受ける必要があります。遺留分の放棄が真意に基づいたものであるか否かをチェックするためです。

なお、「遺留分の放棄」と「相続の放棄」とは全く別の制度であり、その効果等も異なりますのでご注意ください。

 

 

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