目次
1.金融商品取引業とは
金融商品取引業は、金融商品取引法(以下「法」といいます。)2条8項に定義されています。金融商品取引業に該当するか否かは、専らこの定義規定によって判定されますが、一般的には、有価証券やデリバティブ取引に関して、顧客に対するサービスを業として提供することが金融商品取引業に該当するものとされます。
金融商品取引業は、内閣総理大臣(財務局長等に権限が委任されています。)の登録を受けた者でなければ、これを行うことができません(法29条)。当該登録を受けた者を金融商品取引業者といいます(法2条9項)。
金融商品取引業は、主に第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業及び投資運用業の4つの類型に分かれます。
(1) 第一種金融商品取引業
第一種金融商品取引業は、法28条1項に定義されており、同項各号に該当する行為を業として行うことをいいます。株式や社債といった流動性の高い有価証券の取引や有価証券・商品に関連するデリバティブ取引に関するものは厳格な規制が必要なものとして、第一種金融商品取引業として規制されます。
(2) 第二種金融商品取引業
第二種金融商品取引業は、法28条2項に定義されており、同項各号に該当する行為を業として行うことをいいます。組合型ファンド持分など流動性の低い有価証券の取引や有価証券・商品に関連しないデリバティブ取引に関するものなどが第一種金融商品取引業と比べて緩やかな規制で足りるものとして、第二種金融商品取引業として規制されます。
(3) 投資助言・代理業
投資助言・代理業は、法28条3項に定義されており、同項各号に該当する行為を業として行うことをいいます。投資助言業務(法28条3項1号)と投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介(法28条3項2号)が投資助言・代理業に該当します。
(4) 投資運用業
投資運用業は、法28条4項に定義されており、同項各号に該当する行為を業として行うことをいいます。他者の資産について運用(その指図を含む)を行うことが投資運用業に該当します。
2.必要な許認可と体制整備
金融商品取引業を行うためには、冒頭で述べたとおり、原則として登録が必要です(法29条)。ただし、届出のみで行うことが認められている適格機関投資家等特例業務(法63条)や認可を受けることとされている私設取引システム(PTS)の運営を業とする場合(法30条)などの例外があります。
また、登録要件が一部緩和されているものとして、プロ向け投資運用業(法29条の5)、第一種少額電子募集取扱業務及び第二種少額電子募集取扱業務(法29条の4の2、法29条の4の3)などがあります。
(1) 登録手続について
金融商品取引業者としての登録を受けようとする場合、まず、行おうとする事業の内容・方法を検討・整理し、事業を適確に遂行するための社内態勢を整えることが重要です。つぎに、金融当局(金融庁/財務局・財務事務所等)に事前相談を行い、その後、登録申請書を提出します。登録申請書を提出してからの標準処理期間は2か月と定められていますが(金融商品取引業等に関する内閣府令350条1項1号)、これには、事前相談に要する期間はもちろん登録申請の補正などに要する期間は含まれません。
(2) 社内体制について
金融商品取引業者としての登録を受けるためには、社内体制整備が必要とされ、登録後においても継続的な体制整備が求められます。社内体制整備として、経営管理体制、コンプライアンス態勢、リスク管理態勢が特に重要となります。
3.登録の難易度について
金融商品取引業の4類型のうち、最も規制が厳しく登録申請上も難易度が高いのは第一種金融商品取引で、次いで投資運用業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業の順となります。ただし、近年では比較的規制が緩やかとされる投資助言・代理業や第二種金融商品取引業についても、行おうとする事業の内容・方法によっては、フルスペックに近い態勢整備を要求されるケースがあるなど、形式的な難易度に比例しない労力と時間を要することがあります。
4.登録実務の雑感
金融商品取引業者の役職員としてではなく、行政書士として改めて金融業規制を俯瞰してみると、金融商品取引業者を取り巻く環境は、一段と厳しいものとなっている印象です。例えば、投資助言・代理業の新規登録において、かつては長くても6か月程度と認識されていることもありましたが、現在では、事前相談を始めてから登録まで約8か月程度を要しています。同業者からも、1年以上かかることは珍しくない、と聞きます。
金融商品取引法その他関係法令に沿った適切なビジネススキームの検討・整理がなされ、必要な態勢整備の理解を深め準備しておくこと、十分な検討と準備の結果をもって事前相談に臨むことが、より少ない労力と時間で登録申請まで到達できるポイントであることは間違いありません。そのため、金融商品取引業の新規登録をご検討いただいている方には、ビジネス構想の早い段階でご相談いただくことをお勧めしております。
金融の「現場」を知る行政書士として、またコンプライアンス業務の「パートナー」として、ご相談の機会をいただけたらと存じます。